遠い場所から味覚が共有できる。NTTドコモが開発した技術が実現する新しい体験

NTTドコモと明治大学総合数理学部の宮下芳明研究室、H2L(東京都港区、玉城絵美社長)は、相手の感じ方に合わせて味覚を共有できる技術を開発した。味覚関連のデータ分析機器で伝えたい味を数値化。25項目の質問を通じて共有する相手の味覚の感じ方を推定し、味覚再現駆動装置が20種類の味覚標準液を使って伝えたい味を再現する。映画鑑賞時に、作品の主人公が食べるものの味を鑑賞者にも共有するといった新しい体験が期待できそうだ。(編集委員・水嶋真人)

近未来の、ある日。母が作ったトマトソースを娘が外出先から味見するため、母から送信されたレシピデータを基に味覚再現駆動装置がトマトソースの味を再現した液体を抽出した。酸っぱいと感じた娘は、自分が感じた味覚データを母に送信し、母と共有することにした―。ドコモがこのほど都内で開いた展示会「ドコモオープンハウス24」では、このようなトマトスープの味を共有できるブースが注目を集めた。

同ブースでは、来場者がタブレット端末を通じて喫煙の頻度やレモンをかじれるかなど味覚に関する25の質問に回答する。その結果を基に、ドコモが独自のアルゴリズム(計算手順)で開発したシステム「人間拡張基盤」が味覚の感度に対する個人差を推定。娘が酸っぱいと感じたトマトスープの味を来場者が味わえるように調整した液体を味覚再現駆動装置から抽出した。母が感じたトマトスープの味を再現した液体も味わうことで、大人と子どもが感じる味の違いを来場者が自らの味覚で確かめられる。

味覚再現駆動装置で使う主な食品添加剤

味覚再現駆動装置は塩化カリウムや炭酸カリウムなど五味(甘味・塩味・うま味・酸味・苦味)を再現できる各食品添加剤の配分を調整した味覚標準液を用いた。展示ブースのトマトスープの味を再現した液体には酸味を感じるクエン酸、うまみのグルタミン酸ナトリウム、塩味の塩化ナトリウム、甘味のスクロースとフルクトースを使用している。

ドコモ6Gネットワークイノベーション部ユースケース協創担当の石川博規氏は、実用化への課題を「味覚再現駆動装置で再現できる料理レシピを増やすことと、人間拡張基盤が分析する味覚感度の精度を上げることだ」と話す。現時点の味覚感度の分析精度は90%程度だが、「展示会などを通じてデータを集めながら精度を上げていきたい」とする。

2024年初頭に放映されたドコモのCMでは、グルメリポーターの彦摩呂さんがブイヤベースのスープを飲む映像を見ている俳優の綾瀬はるかさんが手に持つスプーンに液体が抽出され、彦摩呂さんが飲んだスープの味を共有できるイメージ映像が流れた。

現在の味覚再現駆動装置はコーヒーメーカーほどの大きさで「CMのスプーンのように小型化するにはまだ時間がかかる」(ドコモの石川氏)が、展示会への出展などを通じてパートナー企業を発掘し、人間拡張基盤や味覚再現駆動装置の用途開発を進める考えだ。