今回の研究の概要(画像: 東北大学の発表資料より)

 東北大学、京都大学、科学技術振興機構などは15日、がんが末期になると、全身に不調が生じる仕組の一端を解明したと発表した。これまでがんが末期なると、全身に不調が生じることは知られていたが、その仕組の理解は、限定的だった。研究グループによれば、今回の研究成果によって、なぜがんが末期になると全身に不調が生じるのか、その仕組について理解が進み、そのような不調を強力に抑える方法の開発につながることが期待できるという。

【こちらも】腫瘍細胞の血管を標的にした新しいがん治療 北大らの研究

■がん悪液質とは?

 がんが末期になると、私達の体にさまざまな不調が生じる。例えば、食欲の減退、脂肪・筋肉・体重の減少、全身の炎症などである。これをがん悪液質という。

 がん悪液質は、患者の生活の質を著しく損なわせ、余命にも著しく影響を与える。

 しかしがん悪液質については、さまざまな要因が複雑に絡み合っており、その仕組についての理解は限定的で、これを強力に抑える方法もみつかっていない。

 そこで研究グループは、肝臓に注目しつつ、その仕組の解明に挑んだ。

(広告の後にも続きます)

■がん悪液質の仕組の一端を解明

 まず研究グループは、乳がんや大腸がんのマウスの肝臓で発現量が増えている、ニコチンアミドメチル基転移酵素と呼ばれる酵素に着目。この酵素を持たないマウスを作製してがんを移植し、通常のマウスにがんを移植した場合と比較した。

 すると、ニコチンアミドメチル基転移酵素を持たないマウスでは、がんによって引き起こされる肝臓における代謝異常の一部が緩和されることが判明。

 このことから研究グループは、がんによって、ニコチンアミドメチル基転移酵素の発現量が増えることで、肝臓における代謝異常が引き起こされ、これががん悪液質の要因の1つになっていると結論付けた。

 研究グループでは今後、ニコチンアミドメチル基転移酵素が関係する代謝異常について、さらに解明を進めると共に、この酵素が関係していない異常についても分子レベルで解明を進め、がん悪液質の全体像の解明に迫っていきたいとしている。